Interview代表インタビュー

株式会社うぇるなすについて

うぇるなすは健康やヘルスケアを軸とした事業を展開されていますね。具体的にはどのような内容でしょうか?

笠井:大きくいうと2つ、法人向けの健康経営支援サービスと、医療・健康に関するコンテンツ制作事業です。

健康経営支援サービスの大きなくくりの中に、健康経営優良法人認定支援、健康セミナー、ショクバの部活(企業内運動推進)、がん治療と仕事の両立支援サービスなんかがありますね。

後者は、医療や健康に関わる情報を、一般の人にも分かりやすい言葉や表現でライティング・制作します。製薬企業やヘルスケアサービス企業、医療機関などがお客様ですね。

「健康経営」という言葉は最近耳にするようになりましたが、どのようなものなのでしょうか?

株式会社うぇるなす 共同代表 元キックボクシング日本チャンピオン/健康経営エキスパートアドバイザー/食育指導士 板倉 直人写真

板倉:健康経営については、福利厚生のようなイメージで捉えている方もいらっしゃるんですが、健康経営は単なる福利厚生ではありません。従業員の健康を経営のための資本と捉えて、企業の長期的な成長のために積極的に投資をしていこうという考え方です。
従業員の健康に投資をすれば、その企業の業績にも結果として現れることが、研究結果などから明らかになっています。

笠井:特にこれからの日本で、企業が継続して業績を高めていこうと思ったら、従業員の健康にコミットすることが必須です。

私が社会人になった1990年代頃は若手人材も豊富で、企業の人事戦略・成長戦略は「新規の人材採用」が正解でした。今は若年世代が減り、長く会社を担ってくれるような若手人材は簡単に採用できません。となれば既存社員に長く、生産性高く働いてもらう必要がありますが、従業員の平均年齢も高くなれば、当然病気になったり健康を害したりする人の割合も増えていきます。

平均年齢に関係なく健康度の高い従業員の割合をどれだけ増やせるかが、企業の競争力を決める重要なファクターになってくるといえます。

福利厚生と健康経営は、具体的にどのような部分で違いがあるのでしょうか?

株式会社うぇるなす 共同代表 CNJ認定がんナビゲーター/健康経営アドバイザー 笠井 篤

笠井:健康経営の活動は「PDCA」を回す、ということが大きな違いです。PDCAはみなさんご存知の通り、計画をたてて実行し、結果をチェックして次の行動に活かすことです。PDCAを回すにはデータを取得して数値化、分析することが必要です。

いきあたりばったりではなく、従業員の健康を保ち高めるための施策を計画して実施し、従業員の健康が改善したか、または改善につながるプロセス指標がよくなったかを見ながら、次の計画を立ててまた実行していく。売上や利益などの経営数字を見ながら事業活動を行っていくことと同じ、まさに「健康経営」です。

「健康促進」ではなく「経営」なんですね。「経営」という視点でみたときに、その他にもメリットはありますか?

板倉:健康経営を行うメリットは沢山あって、具体的には従業員エンゲージメントの向上やその結果としての離職率の低下などですね。経済産業省の調査でも、健康経営に取り組む企業の離職率は全国平均の半分以下という数字が出ています。

健康経営に取り組んでいることを社外に積極的に発信することでブランディング化でき、その結果採用力の強化にもつながります。
弊社がサポートしている企業で新卒新入社員にインタビューしたところ、ホームページやSNSで社内スポーツなどの活動などを見て、活気のあるコミュニケーションのよさそうな会社だと思って応募した、という声もありましたので、求職者や学生は見ていますね。

今の若い世代は、昔に比べて自分の体や健康に気を使っている人が増えていますね。お二人が健康に関する事業に取り組むきっかけはあったのでしょうか?

板倉:私は元々キックボクシングの選手をしていて、その頃の挫折がきっかけです。大学を卒業して就職、その後にキックボクシング選手になったんですが、選手になる前はとても不健康な生活を送っていました。喫煙もするし、お酒も飲めるだけ飲む。脂っこい食べ物やお菓子も好きでしたし、睡眠もあまりとらないような「THE不健康」な生活です(笑)。

その煽りを選手になってからくらってしまいました。
選手生活では怪我が多く、骨折も大小30回以上したと思います。そこで「なんでこんなにパフォーマンスが悪いのか?」を考えたときに、そもそもの生活習慣が不健康だったことに気が付きました。

不健康なプロアスリートだったんですね(笑)

株式会社うぇるなす 共同代表 元キックボクシング日本チャンピオン/健康経営エキスパートアドバイザー/食育指導士 板倉 直人

板倉:そうなんです。結果が出るわけがないですよね(笑)。
そこで、健康を意識した生活習慣に変えたんです。すると見違えるようにパフォーマンスが上がり、日本チャンピオンになることもできました。
そればかりか、考え方やマインドも大きく変わりました。不健康な生活だと、体だけではなく心も不健全でネガティブになってしまうんですが、健康を意識してからは本当にポジティブになりました。このときの感動や経験は自分の人生にとって非常に大きなものでした。

幸い私はキックボクシングを通じて自分の不健康さに気付くことができましたが、体の故障や病気になるまで、健康の重要さに気付かない人も少なくありません。自分の経験を伝えて、多くの人に健康を意識してもらえるようにしたいと考えたことが、事業を始めようと考えたきっかけです。

笠井:私は、妻ががんになった経験、これに尽きます。
当時の私はがん治療の技術を開発する医療関係の会社にいて、がんのリスクについての知識があったにも関わらず、今思えば当時は本気で自分ごとと捉えていませんでした。
妻のがんがわかったとき、予防や早期発見、もっと自分にできたことがあったんじゃないかと本当に後悔しました。幸い治療はうまくいきましたが、つらい副作用なども経験し、また治療期間は長くかかり、今も続いています。

健康は失われるまでその大切さに気づかないと言いますが、本当にそのとおりで、どれだけ仕事が順調でも、お金があっても、健康がなければ意味がないと痛感しました。自分の健康も大切な家族の健康も同じです。健康だからといって必ずしも幸せとは限りませんが、健康が失われたところに幸せはないと思います。

お二人とも、個人の体験がきっかけになっているんですね。最初から一緒に起業しようってなったんですか?

株式会社うぇるなす 共同代表 CNJ認定がんナビゲーター/健康経営アドバイザー 笠井 篤 斜め写真

笠井:いえ、最初はそれぞれひとりで事業を始めたんですよ。
板倉は個人向けの健康指導サービス、私は医療ライティング・コンテンツ制作です。板倉とは、もともと知り合いでした。前職で勤めていたときに人の紹介で知り合って、趣味でキックボクシングを習っていました。

その後独立して、ある日、板倉と仕事のことを話している時に「笠井さん、予防や早期発見の話しをしているときの方が楽しそうですよね」って言われたんです。
がん治療の世界に長く居て、病気になってしまった患者さんやご家族のためにやらなければ、っていう想いが強かったんですが、板倉に言われて、たしかにがんのような病気にならないこと、もしなっても早期で見つけて大事に至らないようにする「予防」って大事だなって改めて思いました。

その頃ちょうど「健康経営」を国も積極的に推進していることを知って、運動指導や食生活改善、病気と治療の両立支援等、わたしたちが得意とする分野が健康経営の取り組み項目じゃないか、じゃあ一緒にやろうってなりましたね。

うぇるなすの強みについて

どんなところがお二人の、うぇるなすの強みといえるでしょうか?

株式会社うぇるなす 共同代表 元キックボクシング日本チャンピオン/健康経営エキスパートアドバイザー/食育指導士 板倉 直人

板倉:私は、プロの選手を引退した後は、色々なジムや、自分で立ち上げた社会人向けのスポーツ交流イベント「大人の部活」で、たくさんの方を指導してきました。
また、個人向けの食事と運動を組み合わせた健康指導サービスで300人以上に健康 習慣やトレーニングを指導してきた実績があり、そのなかで、体質や生活習慣が十人十色であると分かったので、どんな人にどのように指導を行っていくべきか柔軟に対応できます。

もちろん、企業向けに行う場合は個人向けで行っていたように、一人ひとりに合わせた個別指導をすることは難しいです。ただ、価値観や向き不向きは人それぞれということを知っていますので、正解を押し付けるような指導はしません。

楽しく健康を意識させるのが得意なので、その経験・知識を活かせることが、私自身、ひいてはうぇるなすの強みになると思います。

笠井:板倉は、元キックボクシングチャンピオンという肩書きから、ハードなトレーニングを強要される、厳しく指導されるというイメージを持たれることが多いんですよ。だからそういうときには、「オラオラ感ゼロで、運動初心者や運動が苦手な女性にも超やさしいですよ」ってフォローしてます(笑)。
お客様の会社の従業員と一緒にマラソン大会に参加したり山登りをしたり、スポーツを通じて仲良くなって、ビジネス上だけに留まらない関係を築いてくれるのもすごいなと思います。

また、板倉は、健康経営に取り組む企業を支援する上位資格であるエキスパートアドバイザーの資格を持っていますが、私から見ても非常に丁寧で、企業の担当者様に寄り添ったサポートをしていると思います。

板倉:人事など企業の担当者様は多忙ですから、できるだけ負担を軽くできるように、ちょっとした質問などもいつでもお答えするなど、丁寧なサポートを意識しています。

笠井:私はさっきもお話したように、もともとがん治療技術を開発する企業に16年間いて、前半の8年間は人事担当、後半8年はがん患者さんやご家族向けの情報支援を担当していました。
人事担当としては衛生委員会や従業員の健康管理、福利厚生を管掌していましたし、患者さんへの情報支援を担当していたときは、全国のがん治療専門医の先生方とお仕事をさせていただき、最新の治療情報や療養についての情報を学びました。患者さんやご家族に情報を分かりやすく伝えるために、WEBメディアを立ち上げて運営したり、セミナーを開催したりしていました。

そんな中で自分が患者側の立場になって、また、がん患者さんとお話をさせていただく機会が増えたことで、当事者にならないとわからない悩みや生活の不便さなど、患者やその家族がどのようなことで悩まれているのかを改めて知ったんです。そうしたら、みんな情報にとても困っていることが分かりました。

インターネットやSNSで情報は溢れていますが、逆に欲しい情報が探しにくかったりしますよね。

株式会社うぇるなす 共同代表 CNJ認定がんナビゲーター/健康経営アドバイザー 笠井 篤

笠井:ですね。さらに医療や健康の情報って、科学的根拠不明のものやウソの情報なんかも多いんですよ。
たまたま自分は、日本のがん治療を牽引しているような先生方から知識を得て、求められている情報も分かった、だからまず患者さんやご家族など、一般の方が見るコンテンツ制作、情報サイト運営を始めました。有難いことにこの情報サイトは、月間30万PVに至るまでに成長しました。製薬会社やヘルスケアサービス企業、医療機関から受託して、一般の方向けに医療・健康の記事やパンフレット、動画などを制作するコンテンツ制作事業も、弊社事業のもう一つの柱となっています。

企業側の視点、患者や従業員側の視点の両方で必要なことが考えられるようになったので、企業のがん対策、治療と仕事の両立支援サービスも行っています。健康経営優良法人認定を取得している上場企業を中心とした企業からご依頼をいただく従業員のがん対策セミナーは、アンケートでの平均満足度94%という結果をいただいています。

今後について

今後のビジョンはありますか?

株式会社うぇるなす共同代表 笠井篤 板倉直人 写真

板倉:従業員を大切にする会社を増やしたいと思っています。従業員がいなければ当然業務がまわらないわけですから、何よりも従業員を一番大切にすべきです。健康経営は会社のためでもありますが、従業員のためでもあります。
健康になればパフォーマンスが上がって業績が上がりますし、従業員のウェルビーイングも満たされます。さらに言えば、世の中の景気が良くなり、多くの人々の幸福度も上がっていくのではないかと思います。

そして、将来的には教育にも健康を取り入れるような世の中にしていきたいです。健康習慣の悪さに気付くのってほとんどの場合は大人になってからですよね。自分にも小学生の子供がいますが、子どもの頃から教育の中で健康習慣を身につけていけば、社会全体で健康意識が高まりますし、働く環境も自然に良くなっていくはずです。

笠井:事業を立ち上げたときの最初の目標である「がんになる人を減らしたい、がんになったとしても命を落とさないで済む人を増やしたい」を進めていきたいです。それには正しい情報をしっかりお伝えしていくこと。仮にがんになってしまっても、今は働きながら治療して復職もできますので、治療と仕事が両立できる企業の環境整備のお手伝いもしていきます。先進諸外国ではがん患者は減ってきているのに、日本では増え続けているのが現状ですので、貢献できることがたくさんあると思います。

板倉:うぇるなすのような健康を支援する会社がなくても、世の中全体の健康意識が高まっている状態が理想ですね。「世の中がよくなれば必要でなくなる事業」って、それだけ社会課題に向き合っている事業といえるので、そこに取り組んでいるのは、誇らしいと感じます。

「最終的に自社がなくなれば良い」という考え方、とても素敵ですね。ありがとうございました。

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